在りし日の歌

 

 この「在りし日の歌」というピアノ曲を私は、弟子の一人がウィーンでリサイタルを開くと言う際に書き上げた。

 

海外で演奏するという事で、どのようなスタイルで書けばいいのか、あれこれ考えた記憶がある。結局、締め切りに追われ何が何だかよく分からないままに曲は完成したのだが、何となく東洋を意識した、いささか意地汚い雰囲気が聴き取れなくもないような気もする。

 

とは言え、この曲に取り組んだのは五月の爽やかな頃で、のびのびと書いた。青藍山の仕事場の窓から見える緑に煽られるように一気に書き上げたのを憶えている。
 

 

 この後に似たような曲を二つ書き足した。この曲を夏の章として、秋、冬とそれぞれの章をつなげて三つの楽章からなる組曲とした。つまりこの下の曲目解説にある「最初の楽章として作曲した」というのは適当な作り話である。
 

 

 大した曲ではないが、好き嫌いで言えば、割と好きな方である。今回、久しぶりに聴いて結構楽しい気分になった。もし何かの機会に、この曲を人前に晒す事があれば、その時はもう少しそれらしいタイトルに変えようかとも思う。

                       CD 「太田哲也 ピアノ作品集」のライナーノートより

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